MT5のスワップ算出方法の違い

MT5のスワップ算出方法の違い

MT5には、「ポイント」「通貨」「比率」「再開始」の4種類のスワップ徴収方法があります。

口座のベース通貨やドルで設定できる「通貨」を除けば、スワップポイントの計算方法はややこしく、顧客からの問い合わせも多い項目ではないでしょうか。

今回はFXブローカー各社の傾向や4つのスワップ算出方法の違いを紹介します。スワップポイントをどのように設定するかはリクイディティプロバイダーによるところが大きく、CFD銘柄では各社バラバラとなっています。計算方法については詳しく解説していますので、社内研修等にもご利用ください。

スワップの算出方法は各社で異なる

ブローカーによってどのスワップの算出方法を採用しているかが異なります。スワップの算出方法はブローカーが自由に選べますが、リクイディティプロバイダーの設定に合わせるブローカーが多いです。

各社の傾向

主要なブローカーのスワップポイントの傾向をまとめました。FXに関しては、ほぼ全ての会社がポイントを採用しています。その他のCFD銘柄もポイントが多めですが、取り扱いブローカーが少ない株式や仮想通貨は、他の算出方法も多く採用される傾向にあります。

銘柄 ポイント 通貨 比率
FX 15社 1社 -
貴金属 12社 3社 -
エネルギー 11社 2社 -
コモディティ 1社 1社 -
株価指数 9社 6社 -
株式 2社 1社 1社
仮想通貨 3社 2社 3社

急増するスワップフリー

最近では、スワップフリーを採用するFXブローカーが増えています。スワップポイントがどちらのポジションもマイナスになるように設定しているブローカーも多く、トレーダーにとっては負担となっているため、長期でポジションを持っても損失が発生しないスワップフリーの仕組みは人気が高まっています。

現在は以下のブローカーがスワップフリーを採用しています。スワップフリーの採用時期は2022年が多く、最近のトレンドとなっています。

ブローカー
スワップフリー対応銘柄
XMTrading
仮想通貨
エネルギー
コモディティ
FX(メジャー通貨ペアのみ)
ゴールド
シルバー
Exness
仮想通貨
株式
株式指数
ゴールド
Land-FX
FX
ゴールド
FXGT
仮想通貨
ゴールド
株価指数

4種類のスワップ算出の方法

MT5で選択できる4つのスワップ算出方法の特徴をそれぞれ紹介します。

ポイントによる算出

ポイントによる算出方法では、「スワップサイズ × ポイント価格 × 1ロットの単位」という計算式を用います。ポイントによる算出は、FX銘柄においては最も一般的な方法であり、ほとんどのFX会社で採用されています。

ポイント価格の算出方法

ポイント価格とはレートの最小単位のことで、pips単位の一つ下になることが多いです。ドル円などの3桁銘柄であれば小数点以下3桁目(0.001円)、ユーロドルなどの5桁銘柄であれば小数点以下5桁目(0.00001ドル)となります。

ポイント単位 ポイント単位

ユーロドルなどのクロス円以外の銘柄は、ポイント単位が円以外で算出されますので、円換算でのスワップポイントを算出するには対応するクロス円のレートも必要となります。

スワップサイズの確認方法

スワップサイズはロングポジション・ショートポジションごとに設定でき、FX銘柄であれば、多くのブローカーは10~-10の幅でスワップサイズを設定します。

ポイントの設定方法 ポイントの設定方法

円換算での計算方法

スワップサイズが5、1ロットが10万通貨の場合、「スワップサイズ × ポイント価格 × 1ロットの単位」の計算式に当てはめると、以下のスワップポイントとなります。

銘柄 ポイント価格 円換算のレート 計算方法
ドル円 0.001円 - 5 × 0.001 × 10万通貨 = 500円
ユーロドル 0.00001ドル 1ドル130円 5 × 0.00001 × 130円 × 10万通貨 = 650円
ドル円
ポイント価格 0.001円
円換算のレート -
計算方法 5 × 0.001 × 10万通貨 = 500円
ユーロドル
ポイント価格 0.00001ドル
円換算のレート 1ドル130円
計算方法 5 × 0.00001 × 130円 × 10万通貨 = 650円

通貨による算出

ポイントによる算出方法では、「スワップサイズ × ポイント価格 × 1ロットの単位」という計算式を用います。

通貨による算出方法では、1ロットあたりのスワップの大きさと、ポジションのロット数が掛け合わされます。1ロットあたりのスワップの大きさは、「ロング:1 USD」「ショート:0.5 USD」といったようにブローカーが指定します。

上記の例ではUSDが大きさの単位となっていますが、単位に用いる通貨はブローカー側が4種類の中から設定できます。

  • ・ 初期通貨(基本通貨)
  • ・ 利益通貨(決済通貨)
  • ・ 証拠金通貨
  • ・ グループ設定通貨(顧客が属するグループのベース通貨)

比率による算出

比率による算出では、スワップ計算に年利が用いられます。計算式は「(1ロットあたりのポジション価格 × ロット数) × (年利 ÷ 年間日数)」です。年利と年間日数はブローカー側が設定できます。

この計算方法には2つのオプションがあり、1ロットあたりのポジション価格の計算に用いる価格を、スワップ算出時の価格とポジション取得時の約定価格から選択できます。

なお、計算対象が為替ペアのポジションの場合、1ロットあたりのポジション価格は基本通貨(通貨ペアの左側の通貨)の単位で求められるため、どちらを選んでも変わりません。

再開始が有効な場合における算出

ポイント・通貨・比率による算出では、ポジションが持ち越され、スワップの徴収・付与はポジション決済時に行われることが前提でした。

しかし、再開始が有効なスワップ種別を選んだ場合、ポジションはロールオーバーの時刻に強制的に決済され、ロールオーバー前、または後の価格で再取得されます。スワップはポジションの再取得価格の調整によって反映される仕組みです。

再開始が有効な場合における設定では、ポジションを終値・Bidのどちらで再取得するかを選択できます。また、スワップ設定ではなくメインサーバー設定画面の「スワップ付与前にレポートを生成」タブで調整することにより、1日の終わりまたは開始のどちらの時点でポジションを再取得するかが選択できます。

スワップの設定方法

MT5のスワップ設定は、管理者端末の「銘柄一覧」から銘柄ごとに行います。また、管理者端末の「グループ」や「ネットワーククラスタ」における設定も、スワップ処理に影響を与えます。

銘柄一覧から銘柄ごとに設定する

スワップを設定するには、まず管理者端末の「銘柄一覧」を開きます。そして「スワップ」タブをクリックし、各パラメータを設定して「OK」ボタンをクリックします。

スワップの設定画面 スワップの設定画面
番号 パラメータ 説明
1 スワップ付与を有効化 有効化すると、スワップが付与・徴収されるようになります。
2 取引種別 スワップの算出方法を選びます。
3 ロングポジション ロングポジションに適用されるスワップの大きさを入力します。
4 ショートポジション ショートポジションに適用されるスワップの大きさを入力します。
5 一年の日数 比率による計算方法が選択されている場合に、1日あたりの利率を計算するために利用されます。デフォルトでは360が入っていますが、その他の日数を選択・入力することも可能です。
6 休日を自動的に考慮 有効化すると、休日の前日に当日分と休日分のスワップがまとめて付与・徴収されるようになります。ここでの休日は、管理者端末の「休日」という項目の設定に対応しています。
7 スワップの乗数
各サービス稼働日のスワップ乗数を設定します。各方法で算出された値は、スワップ乗数と掛け合わされて付与・徴収されます。
スワップ乗数は手動で入力することも、右横にあるボタンを使って入力することもできます。

グループやネットワーククラスタの設定も影響する

スワップ処理は、管理者端末の「グループ」や「ネットワーククラスタ」の設定によっても規定されます。これら2つの項目は、以下のようにスワップ処理に関わっています。

項目 説明
グループ グループの「許可」タブに「スワップの付与」という項目があります。「スワップの付与」が無効のグループに所属するアカウントに対しては、「銘柄一覧」でのスワップ設定が有効であっても、スワップ処理が行われません。
ネットワーククラスタ メインサーバー設定画面に「スワップ付与前にレポートを生成」タブがあります。そのタブでは、サービス稼働日などを設定できます。銘柄一覧での設定内容にかかわらず、サービス稼働日に指定されていない曜日にはスワップの徴収・付与は行われません。

上記の通り、スワップ処理は複数の項目で規定されます。適切に処理が実行されるように、各項目の役割や関係を把握した上で設定する必要があります。

MT4のスワップ

スワップの徴収・付与機能は、MT5とMT4で大きく変わりません。しかし、異なる部分もあります。ここでは、スワップの算出方法ごとに機能を比較した結果を紹介します。

算出方法 MT5とMT4の比較
ポイント ポイントによる算出はどちらでも利用可能です。
通貨 MT4で選択可能な通貨は「初期通貨(基本通貨)」「証拠金通貨」の2つです。MT5では「損益通貨(決済通貨)」「グループ通貨」を加えた4種類の通貨から選べます。
比率 比率による算出はどちらでも利用可能です。ただし、MT4では年間日数を360日から変更することはできません。
再開始 MT4では、再開始によるスワップ徴収は、スワップ設定画面ではなく管理者端末内の「共通」から設定を行います。スワップ設定で「ポイント」を選択した上で、「共通」から再開始の設定を行います。

MT5とMT4では共通点が多いものの、上記のような細かな変化も見られます。

まとめ

最も多く利用されているのはポイント制ですが、具体的な計算方法は複雑で、正確に理解しているユーザーは少ないのが現状です。公式サイト等で、スワップポイントの円換算の金額目安を提示すると親切ですね。

なお、最近はスワップフリーが非常に好まれる傾向にあります。両面マイナススワップの銘柄が多くなり、プラススワップのメリットが薄れたことで、この傾向が強化されています。スワップフリーを導入することは難しいブローカーも多いと思われますが、あまりに不利なスワップポイントの設定をしてしまうと、顧客離れにつながってしまうかもしれません。