MT5 Administrator資格範囲その9 - Trade Serverの設定(前編)

MT5 Administrator資格範囲その9 - Trade Serverの設定(前編)

MetaTrader 5のServer設定のうち、前回はいずれのServerにも共通する3つの設定項目を見ていきました。これに続き、今回からは各Serverの個別設定について確認していきます。

個別設定の初回となる本記事ではTrade Serverを取り上げます。Trade Server(メインTrade Server)はシステム全体の管理も担う点から、MetaTraderプラットフォームのServerの中で一番重要な部分です。*1

*1この記事では、「Server」はソフトウェアを構成する各要素の呼称を表す際に、「サーバ」はハードウェアとしてのサーバを指す際に用いています。

Trade Serverの概要

Trade Serverは、MetaTraderプラットフォームを構成するServerの一つで、Access ServerやHistory Server、Backup Serverと連携しながら、取引処理(ユーザからの注文の受け付け、実行、管理)を行います。

Trade Server Trade Server

Trade ServerにはメインのTrade Serverと、規模感に応じて追加できる追加Trade Serverの2種類があり、メインのTrade Serverはシステム内に一つのみ存在し、他のTrade Serverを含むシステム全体を管理する役割も持ちます。具体的な働きは以下のとおりです。

  • ・ ユーザデータの保存・管理
  • ・ ユーザ接続の認証・認可
  • ・ 取引履歴の保存・管理
  • ・ 取引の確認、管理、実行
  • ・ 内部のメーリングシステムの管理

メインのTrade Serverと追加のTrade Serverは役割が一部異なるため、「Failover」などの一部設定が異なりますが、セットアップ手順は似ています。

また、設定は大抵インストール時のままでも十分運用可能なので、全体的な注意点は特に挙げるほどでもないかと思います。

「デモ」タブ

「デモ」タブでは、Trade Serverでのデモ口座の設定に使います。下図の通り、デモ口座の開設や有効期限に関する設定ができます。

Demoタブ Demoタブ
番号 パラメータ 説明
1 デモ口座 デモ口座を作成した際の動作設定。3つの選択肢があります。
・無効
・ログイン時に有効期限をリセット
・設定した期間中のみ利用可能
2 デモ口座有効期限 デモ口座の有効期限を設定します。「デモ口座」の設定に付随します。

詳細は以降で見ていきます。

「デモ口座」と「デモ口座有効期限」の設定詳細

まず、「無効」を選択した場合、MetaTraderターミナル上でのデモ口座開設を不可にします。そのため「デモ口座有効期限」の設定はできません。なお、この項目が選択されていても、マネージャ端末、アドミン端末とAPI経由での開設は可能です。

「ログイン時に有効期限をリセット」を選択した場合、 開設したデモ口座に接続するたびに、「デモ口座有効期限」に設定された日数に有効期限がリセットされます。例えば、「デモ口座有効期限」を30としたとき、デモ口座の有効期限は、MetaTraderへの最終ログインから30日間ということになります。

「設定した期間中のみ利用可能」を選択した場合、全デモ口座の有効期限は開設してから「デモ口座有効期限」に設定された期間まで有効になります。例えば、「デモ口座有効期限」を30としたとき、デモ口座の有効期限は、デモ口座の開設から30日間ということになります。

期限切れのデモ口座について

期限切れのデモ口座は毎週日曜日の「最適化」の際に削除されます。削除された時のログは以下のような形です。

  • 2017.06.04 03:57:02.626 ClientBase / prepare demo accounts for clean [80 days]
  • 2017.06.04 03:57:02.626 ClientBase / '1008': demo account added to clean [80 days]
  • 2017.06.04 03:57:02.626 ClientBase / prepare demo accounts for clean finished [1 users]
  • 2017.06.04 03:57:02.626 TradeCenter / demo clean started [1 logins]
  • 2017.06.04 03:57:02.626 TradeCenter / demo clean finished

デモ口座を削除する際、取引履歴は削除の対象外で、取引履歴を削除する際はグループ設定の「Inactivity period」で設定できる仕様となっています。

取引履歴は、顧客からの問い合わせ対応や取引情報の確認に必要なため、基本的に削除されないわけです。ただし、長期間保存し続けるとサーバーの容量を圧迫するため、グループ設定で削除を選択できるようになっています。

なお、Live口座の場合、会社が登録されている国の規制により、取引履歴を7年間保存することなどが義務付けられているケースもあります。

デモ口座の有効期限は運用面で判断

デモ口座の有効期限について、開設から30日とするブローカー、最終ログインから1年とするブローカーもあり様々ですが、最終ログインから30日で閉鎖とするブローカーが比較的多く確認できます。最終ログインから30日というのが、ユーザビリティとサービス運営側の負担という点で折り合いがつきやすい設定なのかもしれません。

中には、デモ口座の有効期限を「最終トレードから30日」などとしているブローカーもあります。この設定はMetaTrader上では行えず、各ブローカーが手動または外部システムでデモ口座の閉鎖を行っていることになります。しかし、「最終トレードから〇〇日」の場合にはメリットがあり、それはEAを試験的にデモ口座で長期運用するユーザーにとって便利な点でしょう(ログインする手間が不要なため)。

上でご紹介したように、デモ口座の期限の設定については技術的な面というより運用面の判断になってくるかと思います。ブローカーとしてのサービス方針をもとにデモ口座の期限は柔軟に設定することが可能です。

「スワップ付与前にレポート生成」タブ

「スワップ付与前にレポート生成」タブは、英語では「End of Day」タブとして表示され、1日の取引終了時刻や日次レポート・月次レポートの生成に関する設定ができます。ここで設定した内容によって、スワップや手数料の計算タイミング、およびレポート生成のスケジュールをコントロールすることができます。

End of the dayタブ End of the dayタブ
番号 パラメータ 説明
1 サービス終了時刻*1 1日の取引が終了する時刻です。 この時刻になると、レポートの生成、スワップ、金利、手数料の課金が実行されます。処理は、指定時刻の59秒目に開始されます。
2 サービス稼働日 上記「サービス終了時刻」で設定したタスク(レポート生成、スワップ、金利、手数料の課金など)を、どの曜日の時刻で実行するかを指定します。
3 ロールオーバースケジュール ロールオーバー(スワップなど)の計算を、どのように行うかを設定します。基本的に「サービス稼働日」に指定されていない土日には実行されません。週末にシフトされた場合の対応や3日間スワップの調整など、運用の状況に応じた設定が必要になります。
4 日次レポート設定 日次レポートが生成されるタイミングを設定します。以下の選択肢があります。*2
・一日のサービス終了時刻設定
・スワップ付与後にレポートを生成
5 レポート生成対象日 最終営業日の終了日時です。最終営業日の日次レポートを生成する際、Serverは指定された日付からの取引データを使用します。
6 前回生成対象日 その1日前の取引終了日時を示します。日次レポートに含まれる前営業日の取引状況を計算する際、ここで指定した数値が利用されます。
7 月次レポート設定 月次レポートが生成される、月の締め日を設定します。今月の最終日か、来月の初日か、選択が可能です。
8 レポート生成対象月末日 1か月の最終時刻です。月次レポートを生成する際、この日付が使用されます。
9 前回生成対象月末日 先月末の取引終了日時を示します。日次レポートに含まれる前月の取引状況を計算する際、ここで指定した数値が利用されます。

*1営業日終了時には、ユーザ(クライアント端末)とマネージャ端末では取引や残高操作が禁止されます。行った際には、「Market closed」エラーが返されます。

*2「一日のサービス終了時刻設定」を選択すると、取引終了時点で日次レポートが生成されます。このとき、スワップや手数料は未反映となります。一方、「スワップ付与後にレポートを生成」を選択すると、翌日朝に手数料やスワップ計算がされた上で、その手数料やスワップが反映された日次レポートが生成されます。

レポートを生成するアカウント数にもよりますが、日次と月次レポートの生成は取引時間外に行われることもあり、サーバ負荷においてそれほど大きな問題にはなりません。ブローカーの取引可能時間に合わせる設定でもあることから、この設定も基本的には運用面で決めることになってくるはずです。

まとめ

今回はTrade Serverの「デモ」と「スワップ付与前にレポート生成(End of day)」の設定を見てきました。

Trade ServerはServerの中で一番重要な部分なだけに細かい設定が色々存在します。次回は残り4つの設定を確認し、Trade Serverの個別設定の解説を完結させます。