MT5を始めとする取引プラットフォームは、さまざまな項目を設定することで提供可能になります。設定すべき項目は、サーバー・セキュリティなどのインフラ部分から、スプレッド・銘柄などの細かな部分まで多岐に渡ります。
今回ご紹介するのは、MT5における4種類の約定処理方法です。約定処理とは、銘柄設定の一部であり、注文から約定までの流れを規定するものです。
MT5では4種類の約定処理から選択可能
MT5の取引執行モードには4つの種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
Market
(カウントダウン方式)
|
どの価格で約定するかわからないことに顧客が同意する方式 |
Instant
(ストリーミング方式)
|
注文が出された時点でのレートで約定するか、リクオートされるかの2択となる方式 |
Exchange
(外部サーバ処理方式)
|
注文を外部の取引システムに送信する方式 |
Request
(約定方式)
|
注文前に、約定できる価格を問い合わせる方式 |
管理者端末・マネジャー端末で言語を日本語にすると、「カウントダウン方式」や「ストリーミング方式」などと表記されます。しかし「Market」や「Instant」といった英語の呼び方の方が、トレーダーにも馴染みがあります。
最も使われるのは「Market」
採用されることが最も多い約定処理方法は、Market(カウントダウン方式)です。主要な海外FXブローカーは、ほとんどがMarket方式を採用しています。
Marketが採用されている場合、顧客からの注文が届くと、約定可能なレートで約定します。注文内容をそのままカバー先に発注する場合、カバー先に送信している間にさらにレートがずれる可能性もあります。
上記は、顧客が約定価格を決められないこと、顧客の注文価格と約定価格に差(スリッページ)が生じることを意味します。この点は顧客にとってデメリットです。しかし、リクオートなく注文が約定するというメリットもあるため、Marketは人気の約定処理となっています。
「Instant」は様々な設定が可能
Marketの他に利用されているのは、Instant(ストリーミング方式)です。Instantのみを採用する主要な海外FXブローカーはありませんが、Exness(エクスネス)のプロ口座など、一部の海外FX業者は口座タイプ限定でInstantを採用しています。
Instantでの約定は、顧客が注文した時点のレートで行われます。このため、顧客にとってはスリッページが発生しないというメリットがあります。しかし、FX会社にとっては、顧客が注文をしてから実際に約定するまでのレートのずれにより、損失が発生してしまうリスクがあります。
そのため、Instantでは注文が約定しない条件を細かく設定することができます。約定しない場合、新しい価格を提示するリクオートが行われます。
リクオートについては、以下の項目で設定できます。
パラメータ | 内容 |
---|---|
最大約定許容幅 時間 | 顧客の注文で指定された価格を受け取った時間と、最新の価格を受け取った時間の最大秒数を設定します。設定値を超えると、リクオートを行います。 |
最大約定許容幅 利益 | 注文から約定までに生じる顧客の利益の最大量を設定します。設定値以上の利益が出る注文を受けると、リクオートを行います。 |
最大約定許容幅 損失 | 注文から約定までに生じる顧客の損失の最大量を設定します。設定値以上の損失が出る注文を受けると、リクオートを行います。 |
最大許容 取引量 | 顧客が注文できる最大量を設定します。設定値以上の注文があった場合、約定処理がRequestに切り替わります。 |
クライアントの偏差以内の
リクオートの迅速な確認
|
顧客が設定したスリッページ許容幅以内のリクオートだった場合、即座に約定します。このオプションはデフォルトでオフになっており、オフの場合は、リクオートを顧客が確認した後、再度ディーラーの注文確認が必要となります。 |
「最大許容 取引量」以上の注文があった際の処理方法は、Requestに切り替わりますので、Requestと同様のパラメータを設定します。通常のRequestモードでの設定とは別に設定することが可能です。
パラメータ | 内容 |
---|---|
タイムアウト | ディーラーが提示した価格が有効な時間を設定します。 |
注文の確認 | チェックを入れると、ディーラーが提示した価格に顧客が同意した後、さらにディーラーによる確認が必要となります。 |
「Exchange」「Request」はほとんど使われない
Request(約定方式)やExchange(外部サーバ処理方式)を採用している海外FX業者は、ほとんどありません。
Exchangeでは、顧客の注文がブローカーではなく外部取引所に送信され、市場価格で約定します。Exchangeは主に現物取引で利用される約定方式であり、FXなどのCFD取引ではあまり利用されていません。
一方、Requestが採用されない理由には、手順が複雑などが挙げられます。Request方式では、以下のような流れで約定が行われます。
- 顧客がレートを要求
- ブローカー側がレートを提示
- 顧客が提示されたレートに同意
- 約定
選択できるFillポリシーが異なる
約定処理の方法の違いは、注文の全量が一度に約定しない場合にどう処理するかを定めるFillポリシーにも影響します。
Fillポリシーは3種類あり、約定処理方法ごとに選択できるFillポリシーが異なります。
約定処理 | FOK注文 | IOC注文 | Return |
---|---|---|---|
Market | 有効 | 有効 | 指値・逆指値注文時のみ有効 |
Instant | 有効 | - | - |
Exchange | 有効 | 有効 | 有効 |
Request | 有効 | - | - |
・約定処理:Market
FOK注文 | IOC注文 | Return |
---|---|---|
有効 | 有効 | 指値・逆指値注文時のみ有効 |
・約定処理:Instant
FOK注文 | IOC注文 | Return |
---|---|---|
有効 | - | - |
・約定処理:Exchange
FOK注文 | IOC注文 | Return |
---|---|---|
有効 | 有効 | 有効 |
・約定処理:Request
FOK注文 | IOC注文 | Return |
---|---|---|
有効 | - | - |
なお、それぞれのFillポリシーの意味は以下の通りです。
Fillポリシー | 内容 |
---|---|
FOK注文
(Fill or Kill)
|
全数量が売買できる場合にのみ約定します。注文数量の一部しか売買できない場合は約定しません。 |
IOC注文
(Immediate or Cancel)
|
注文数量のうち取引可能な分だけが約定し、未約定分は自動でキャンセルされます。 |
Return | 一部約定が起こった場合に、未約定分がキャンセルされずに注文として残ります。 |
約定処理の設定方法
約定処理の設定は、基本的に管理者端末で行いますが、マネージャー端末から変更することも可能です。
基本は管理者端末で銘柄ごとに設定
管理者端末で、銘柄設定の「約定処理」タブをクリックし、リストから約定処理を選んで「OK」ボタンをクリックします。
マネジャー端末からも設定可能
「注文決済の確認方式、スプレッド設定の編集」のマネージャー権限を付与することで、マネージャー端末からも約定処理設定が可能になります。この設定変更は、設定変更を行ったマネージャー端末だけでなく、管理者端末の銘柄設定に反映されます。
この設定を行う場合、気配値表示にある銘柄を右クリックし、「プロパティ(E)」をクリックします。
リストから約定処理を選んで「OK」ボタンをクリックすると設定変更は完了です。
マネージャー端末から操作できることで、マーケットの急変時にも瞬時に対応できますが、急に約定方式を変更することは顧客からの不信感につながるため、実際の利用はあまりおすすめしません。
MT4での約定処理
MT4の約定処理についても、ここで簡単に紹介します。
MT4で設定できる約定処理は、Market・Instant・Requestの3種類のみです。また、MT4にはFillポリシーがありません。この点から、約定処理方法のExchangeやFillポリシーは、MT5になって新しく盛り込まれたアイデアの一部だといえます。
まとめ
海外FX業者では、Marketが主流であり、一部ではInstantが使用されます。トレーダーの好みから考えても、リクオートの可能性があるInstantよりもMarketが好まれる傾向があります。
MT4/MT5の設定のしやすさの面でも、Marketは便利ですね。
注文が出されてからリクイディティプロバイダーで約定するまでの値動きによっては、非常に不利なレートで約定してしまうリスクはありますが、そのようなケースはあまり頻繁には起きないこともあり、そのリスクを警戒してInstantを好むトレーダーは多くはありません。
執行モードに迷ったときは、Marketの利用をおすすめします。