前回と前々回では、Trade Serverの個別設定について見てきました。注文の受け付け、取引の実行、ユーザー管理などを担うServerだけに、重要な設定が多数ありました。
今回は、Trade Serverとは別の側面から取引を支える、History Serverの設定について見ていきます。履歴データの管理という役割を通じて、取引と深く関わる重要な構成要素です。*1
*1このシリーズでは、「Server」はソフトウェアを構成する各要素の呼称を表す際に、「サーバ」はハードウェアとしてのサーバを指す際に用いています。
History Serverの概要
MetaTrader 5では、チャート分析やEAのバックテストなど、過去のプライスデータを使った分析機能も非常に重宝されています。この履歴データの収集・保存・配信を担っているのがHistory Serverです。
具体的には、History Serverはデータフィードやゲートウェイを通じて、外部のデータソースからプライスデータやニュースを受信し保存しています。これらのデータは、Access ServerやTrade Serverを経由してクライアント端末に配信され、チャート描画、EAの検証、ニュース確認などに活用されます。


History Serverは単に過去データを保管するだけでなく、MetaTrader全体のデータ基盤として、トレーディング環境の土台を支える役割を持つといえます。
以降では、そんなHistory Serverの個別設定について順に確認していきます。
「履歴」タブ
「履歴」タブでは、履歴データの受信・保存に関する以下のパラメータを設定します。


番号 | 項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | 情報フィードタイムアウト |
データフィードからプライスデータやニュースを受信するまでの待機時間を設定します(最小値は10秒)。
この待機時間を過ぎてもデータが来ない場合、別のフィードへ自動で切り替わります。
|
2 | 最大ニュース保持数 | History Serverにニュースを何件まで保存するかを指定します。ニュースが増えすぎてシステムが重くならないように制限をかける設定です。 |
これらの設定について、以下で補足していきます。
パラメータ設定の考え方
「情報フィードタイムアウト」の設定は実際のところ、接続しているデータフィードの特性に大きく左右されます。基本的にはインストール時のデフォルト設定のままにしておいて、もし特定のデータフィードが応答に時間がかかるようなら、その挙動に合わせて秒数を調整していくのが無難です。
「最大ニュース保持数」については、最適な数値を一律に示すのは難しい項目です。そもそもニュース配信を行わないブローカーもあるほどで、設定は各ブローカーの運用方針に強く依存します。ただ、基本的にはインストール時の設定をベースに、実際の運用で状況を見ながら調整していく形になるでしょう。
「フェイルオーバー」タブ
「フェイルオーバー」タブでは、Trade Serverでの設定同様に、メインのHistory Serverをバックアップと切り替えるための設定をします。おさらいも兼ねてこの機能を見ていきましょう。


番号 | 項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | 切替モード | Backup Serverへの切り替えを実行する条件を選びます。 |
2 | スイッチタイムアウト | モニタリングServerからの接続不能が続いたときに、Backup Serverへの切り替え処理を開始するまでの待機秒数を指定します。*1 |
*1モニタリングServerは、メインServerの可用性をリアルタイムで監視するServerで、Backup ServerとAccess Server(モニタリングモードが有効な状態) が含まれます。
ここでの設定についても、以降で補足していきます。
「切替モード」設定の考え方
まず「切替モード」については、Trade Serverのとき同様に次の3つの選択肢があります。
- ・ 無効
- ・ モニタリングサーバの過半数がサーバにアクセスできない場合
- ・ モニタリングサーバの全てがサーバにアクセスできない場合
サービスの継続性を重視するのであれば、「過半数がアクセスできない場合」を選ぶのが基本的には無難です。これは前回のTrade Serverと同様で、障害発生時にも安定した運用がしやすい設定です。
「無効(Off)」を選ぶケースはかなり限定的です。バックアップ先が技術的には接続可能であっても、何らかの理由でメインとして運用したくない場合などに、選択肢として残すことがあるくらいでしょう。
「すべてがアクセスできない場合」を選ぶケースとしては、バックアップ先を「最後の手段」として位置づけている場合や、何らかの理由で極力使いたくない場合が考えられます。
「スイッチタイムアウト」設定の考え方
「スイッチタイムアウト」についても、設定の考え方は運用方針によって異なります。例えば、大手ブローカーのようにわずかな遅延が機会損失につながる環境では、タイムアウト値を短く設定し、即座に切り替えを行うことでリスクを最小限に抑える運用が一般的でしょう。
一方で、サービス提供の初期段階や、バックアップ側のパフォーマンスを見極めたいときには、あえてタイムアウトを長めに設定し、安定性を優先するということも考えられます。
まとめ
History Serverは単なるログ保管のためのものではなく、チャート描画・EA検証・ニュース表示といった取引支援機能を支える土台として、プラットフォーム全体の信頼性にも大きく関わっています。
そのため、障害発生時に備えるフェイルオーバーの設定では特に、Trade Server同様に慎重な設計が求められます。いざというときに備えて、運営方針に合わせて適切に設計しておくことで、安定した取引環境を実現できます。