Metatraderは、MetaTrader5および関連サービスの操作能力を証明する資格として、「 MetaTrader 5 Administrator」資格を発行しています。
MetaTrader 5 Administrator資格は、プラットフォーム管理やカスタマーサービスのスキル等を有している客観的証明となります。また、この資格を得る過程では、総合的かつ十分な知識を獲得できるため、従業員の能力向上としても用いられます。
このシリーズでは、MetaTrader 5 Administrator資格の取得に必要な知識について書いていきます。第一回目である今回のテーマは、システムの土台となるサーバの要件です。
なお、この記事では「Server」という表現と、「サーバ」という表現を意図的に書き分けています。それぞれの表現が指す内容は、以下の通りです。
表現 | 内容 |
---|---|
Server | 「Server」はソフトウェアを構成する各要素の呼称を表すために用います。 |
サーバ | 「サーバ」はハードウェアとしてのサーバを指すために用います。 |
MT5のサーバ要件
MT5にはさまざまな構成要素があり、それらはサーバにインストールされることでMT5が作動します。このように、サーバはMT5のシステム全体の土台としての役割を果たしており、重要な要素です。
そこで、要件を満たしたサーバを準備することが求められます。ユーザー数や商品の取り扱い状況によっては、推奨要件でもスペック不足となるケースもありますが、基本的なサーバ要件は以下のようになっております。
項目 | 最小要件 | 推奨要件 |
---|---|---|
CPU | Intel i7 4xxx series quad-core(「AVX」が有効であること)*1 |
下記のいずれか以上の要件が必要
・Intel Xeon E3 series quad-core
・Intel Xeon E5 series quad-core
(AVXが有効であること)
|
メモリ | 8GB | 16GB以上 |
ストレージ | 1TBのドライブ2つを「RAID-1」状態で用意*2 |
下記以上の要件が必要
・Trade Server用として、NVMe規格を採用した480GBのSSD2つをRAID-1状態で用意
・History Server用として、NVMe規格を採用した480GBのSSD2つをRAID-1状態で用意
・Backup Server用として、1TBのドライブ2つをRAID-1状態で用意
|
回線 |
・下り100Mbps
・上り100Mbps
|
・下り1Gbps以上
・上り1Gbps以上
|
OS | Windows Server 2016のStandard x64 | Windows Server 2019 StandardのServer Core edition以上 |
CPU
最小要件 | Intel i7 4xxx series quad-core(「AVX」が有効であること)*1 |
---|---|
推奨要件 |
下記のいずれか以上の要件が必要
・Intel Xeon E3 series quad-core
・Intel Xeon E5 series quad-core
(AVXが有効であること)
|
メモリ
最小要件 | 8GB |
---|---|
推奨要件 | 16GB以上 |
ストレージ
最小要件 | 1TBのドライブ2つを「RAID-1」状態で用意*2 |
---|---|
推奨要件 |
下記以上の要件が必要
・Trade Server用として、NVMe規格を採用した480GBのSSD2つをRAID-1状態で用意
・History Server用として、NVMe規格を採用した480GBのSSD2つをRAID-1状態で用意
・Backup Server用として、1TBのドライブ2つをRAID-1状態で用意
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回線
最小要件 |
・下り100Mbps
・上り100Mbps
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---|---|
推奨要件 |
・下り1Gbps以上
・上り1Gbps以上
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OS
最小要件 | Windows Server 2016のStandard x64 |
---|---|
推奨要件 | Windows Server 2019 StandardのServer Core edition以上 |
*1AVXとは、大量のデータに同種の演算を行う際に利用されるものです。
*2RAID-1とは、2つ以上のハードディスクに同じ内容を書き込む技術であり、利用するとデータ復旧やデータ処理の面で恩恵を受けられます。
なお、MetaTraderはどれもWindowsで動く用に作られているので、サーバもWindows Serverになります。
補足事項
上記のサーバ要件には、さまざまな補足事項があります。細々としたものですが、要件を正しく把握するためには必要ですので、ここで構成要素ごとに紹介します。
構成要素 | 補足事項 |
---|---|
Backup Server
(Trade Server)
|
Backup ServerはTrade Serverのコピーとなるため、同様の構成であることが望まれます。用意するサーバは同じでも問題はありません。
しかし後述する通り、サーバがダウンする可能性を考慮し、別々にサーバを用意することが推奨されます。
|
Access Server | Access Serverは基本的にリクエスト処理に使われるため、他よりも求められる要件は下がります。具体的には、メモリは8GBでも十分であり、RAID設定は不要です。 |
History Server | History Serverは大量のデータを処理します。そのため、ストレージの読み込みや書き込みスピードが重視されます。 |
上記に加えて、低遅延にするために、全ての節電モードをOFFにし、メモリーはハイパフォーマンスモード状態に設定することが推奨されています。また、サードパーティーのシステム時刻同期ソフトの利用は禁止されています。これはMT5システムの時間設定に影響する恐れがあるためです。
複数のサーバで運用することが重要
メインサーバが落ちる可能性を考慮して、スペア用のサーバを用意し、2つ以上のサーバで運用することも重要です。サーバが置かれている環境のリスクを考慮し、2つのサーバを別々のデータセンター(AWSではリージョン)に配置すると、安定性はさらに高くなります。
2つのサーバで運用する場合、1つはメインサーバ、もう1つはバックアップサーバとして使います。より具体的には、メインサーバとバックアップサーバのそれぞれにTrade Server、History Server、Access Serverをインストールし、バックアップサーバが常時メインサーバからデータを取り込む状態にします。
そして、メインサーバが停止した場合には速やかにバックアップサーバに切り替えます。このように運用することで、ダウンタイムを最小限に抑えられます。
なお、前述した2つのサーバを用いた運用は最低要件です。理想は、Trade Server、History Server、Access Serverのそれぞれでサーバを分けて運用することです。このような状態なら個別でデータの入れ替えも可能ですので、より安定した運用ができるでしょう。
上記のような運用体制の場合、MetaTrader5の管理者端末のネットワーククラスタでは、以下のように表示されます。
また、より理想的にするには、Trade ServerとHistory Serverはサーバ間の物理的距離がないように配置します。このようにすることで迅速なデータの受け取りが可能になります。
まとめ
「MT5 Administrator資格範囲その1」と題して、サーバ要件についてお伝えしました。細かな補足事項も多くありますが、こうした点をクリアしていくことで、サーバの安定運用が実現します。
次回からは用意したサーバでのシステム設定や、本題となるMT5 PlatformとMT5の各要素のインストール、設定について見ていきます。