アカウント権限
前回はMT4とMT5のAPIの違いについて解説いたしました。MT5はAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)開発の汎用性が向上しており、C++だけでなくASP.netやPHPでの開発も可能となるなどプログラム開発の面でも機能が大幅に改善しています。
今回の記事では、MetaTraderの管理およびAPIを使用する上でのアカウントの権限について紹介していきます。サーバーを設定した段階で1つの管理者アカウント(Admin)が自動的に作成されます。MetaTraderでは全権限がトレードアカウントに付与され、そのアカウントのログインデータでアクセスします。
管理者権限とその他の権限
MetaTraderにはMTAdministratorとMTManagerという2種類のアプリケーションが用意されています。管理者(Admin)アカウントは管理者端末からMTAdministratorを介してログインし、管理者以外のアカウントはMTManagerというツールを介してログインします。
管理者(Admin)権限を保有するアカウントは、取引条件などサーバー設定へフルアクセスできますが、ブローカー内でこの権限を保有しているアカウントは少数です。その他のアカウントは、業務内容に応じて権限が付与される仕組みになっています。
例えば、外国為替通貨を担当するマネージャーアカウントには外国為替口座のグループのみを割り当て、CFD口座を担当するマネージャーにはCFD口座のグループを割り当てます。管理者は各アカウントにグループを割り当てることによって権限を管理します。
APIに関するアカウント権限の違い
MT4とMT5はAPIに関するアカウント権限に大きな違いがあります。
MT4-API権限が考慮されていない
MT4のアカウント構成は簡略化されておりマネジメント権限が中心です。そのため、より細かいアクセス権やAPIに関する明確な権限は存在しません。MT4にもあるServer APIやManager APIはアカウントの現設定がManagerセクションの権限付与ルールに一致していれば、自動でアクセス可能になります。
MT4が開発された当初、端末毎のシステム管理、ソフトウェア管理が主流であり、クラウド環境は考慮されていませんでした。そのため、APIの権限を操作・設定する機能は備わっていません。IPアクセス制限については、単一範囲に限りMTAdministratorで設定可能です。(IPフィルター)
MT5-APIに関する細かな権限設定が可能
MT5は、MT4よりもAPIの分野で改良されており、その部分を考慮に入れた権限構成をすることが可能です。
具体的には、MT4では機能に欠けていたWebServiceAPIがMT5ではWebAPIとなり、各アカウントに対して媒体(APIとアプリケーション)へのアクセス権が明確に付与できるようになりました。一新されたWeb APIはアカウントログインでのアクセスに変わり、その権限もアカウント画面で付与できます。
また、権限の設定ではIP制限(Configuration Setup)も可能です。MT4では単一範囲だったのに対して、MT5では複数のIP範囲が指定可能になりました。
MT4-機能中心のアカウント権限
各アカウントのアクセス権限は、AdministratorのManagerセクションで行い、各アカウントのログインならびにグループを指定します。権限はこの2つの項目で付与する仕組みになっているため、グループ別で同じアカウントに複数の権限を付与することが可能です。
MT4のアカウント構成
MT4のアカウントは、フルアクセス権限がある管理者(Admin)、クライアントアカウントを管理するマネージャーの他、以下のようなアカウント権限構成となっています。
これらは全て管理者端末から操作します。
MT4の主な権限構成
Administrator
(管理者)
|
取引条件の設定やサーバー設定などのフルアクセス権限 |
---|---|
Manager
(マネージャー)
|
管轄するグループのアカウント追加・編集・削除する権限 |
Supervise trades
(取引の監督)
|
アカウントが保持しているポジションの閲覧権限 |
Accountant
(会計)
|
預金とクレジットの入出金実行権限 |
Reports
(レポート)
|
アカウント取引に関するレポート取得権限 |
Risk manager
(リスクマネージャー)
|
顧客のトレード状況とブローカーのカバ-取引に関する情報を取得する権限 |
Internal mail System | 内部メールシステムを介して電子メールを送信する権限 |
Journals | システム操作全体の初期ログを要求および受信する権限 |
Send news | ニュースフローでメッセージを送信する権限 |
Markets Watch | スプレッドと実行する操作のタイプを変更する権限 |
Connections | 現在接続中のアカウントの閲覧権限 |
Personal details | アカウントの個人情報閲覧権限 |
Configure server plugins | MTサーバーへのプラグインインストール権限 |
Automatic server reports | 自動サーバーレポート(ログアナライザーレポートなど)を受信する権限 |
Trading Transactions(取引へのアクセス権) 2種類
Dealer | クライアントの取引を承認する権限 |
---|---|
Edit/Delete trades | クライアントのポジションを操作する権限 |
MT5-APIに関する権限が追加される
MT5のマネージャー・アカウント権限は、8つの大分類に分けられています。MT4では管理者(Admin)権限を持つアカウントのみがサーバー設定、取引条件設定などを行えましたが、MT5は管理者権限を保有していなくても、部分的にサーバーアクセスの権限を付与できる仕組みになっています。
MT5の主な権限のグループ
Connection type | 接続できるサーバーの権限 |
---|---|
Configuration Setup | IPアドレスの権限やプラグインなどの設定権限 |
Administration | サーバーの情報閲覧・取得・操作の権限 |
Accounts | クライアントの入出金・情報編集などの権限 |
Dealing | アカウントの取引に関する情報の閲覧・編集の権限 |
その他に、Back office、広告などに関する情報を扱うFinteza、Subscriptionというグループがあります。各グループは、さらに細かな権限構成になっています。
例えば、MT4では、サーバーに関する権限は「Configure server plugins」のみでしたが、MT5には「Configuration setup」というグループがあり、5つの権限に分かれています。
例)Configuration Setupグループの権限構成
- Configure network: Access ServerやHistory Serverの設定権限
- Configure IP access list: サーバーにアクセス可能なIPアドレスの設定権限
- Configure groups: アカウントに紐づくグループの設定権限
- Configure plugins: プラグインの設定権限
- Configure symbols: 取引銘柄の設定権限
まとめ
本来アカウントはトレードに使われますが、MetaTraderにはマネジメントユーザーとしての役割もあります。APIの改良によって、アカウント権限の構成も変更され、各アカウントが果たす役割が大きくなりました。
MT5の導入により、これまで簡略されていた権限を細かく分けることでアカウントを様々な用途に分けるといった使い方が可能になります。それに合わせ、Web APIの改良でRESTリクエストへのアクセスもアカウントを使う形に変更され、ますますアカウントの役割の幅が広っています。